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TOHO-NEWS
TOHO-NEWS 2012年3月23日 印刷
2012年 3月 23日(金曜日) 00:00

<値上げは独禁法違反>

東電値上げ「独禁法違反」 山梨流通研究会

東京電力が4月から企業などの電気料金を値上げする方針を示していることを巡り、県内のスーパーマーケットなどでつくる山梨流通研究会のメンバーらは22日、公正取引委員会に対し、「値上げは不公正な取引方法に該当し、独占禁止法に違反する」との申告書を提出する。申告書では、値上げで打撃を受けたスーパーが商品価格の転嫁に踏み切った場合、中部電力から供給を受ける隣接県に客が流出する恐れがあると指摘しているという。

 

<消防庁舎被害想定>

大災害時の対応で消防庁舎の被害想定を 消防庁検討会

東日本大震災を教訓に、大災害が発生した際の消防本部の初動対応について議論してきた総務省消防庁の有識者検討会は22日、報告書案をまとめたと各紙が報じた。地震や津波で多くの消防庁舎が使用不能な状態に陥ったことから、事前に庁舎の被害を想定した計画を策定しておく必要性を指摘。同庁は今後、各消防本部に計画策定を促す方針という。

 

<大飯原発再稼働了承>

大飯原発再稼働、審査「了承」 合否判定「目的とせず」 安全委

原発再稼働の可否を判断する前提条件とされるストレステストについて、国の原子力安全委員会は23午後、関西電力大飯原発3、4号機の1次評価結果を「妥当」とした経済産業省原子力安全・保安院の審査書を了承したと各紙が報じた。保安院と安全委による技術的審査はこれで終わり、東京電力福島第1原発事故後初の原発再稼働は、首相と経産相ら関係3閣僚の政治判断と地元の了承に委ねられる。

 

<大規模スクリーニング施設>

車に乗ったまま線量検査 一時帰宅向けの新施設

政府の原子力災害現地対策本部は、警戒区域内の福島県富岡町に大規模なスクリーニング施設を設置し、21日から一時帰宅した住民の検査を始めたと読売新聞が報じた。東京電力福島第二原子力発電所に隣接する駐車場にトンネル状の倉庫(幅約12メートル、高さ約6メートル、長さ約36メートル)を4レーン設置。住民が車に乗ったまま検査と除染を行う。1日当たり約500台分の対応が可能という。

 

<垂直掘削地熱発電>

地熱発電 国立・国定公園内の垂直掘削、条件付き容認

環境省は21日、国立・国定公園内での地熱発電の設置基準を緩和することを決めたと各紙が報じた。これまで開発規制区域の外から斜めに掘る「傾斜掘削」のみを容認する方針を示していたが、自然環境への影響を最小限にとどめるなどの条件付きで、区域内で掘る「垂直掘削」も認めるとした。新基準は3月中に都道府県などに通知するという。

 

<議員歳費削減案>

議員歳費300万円削減提案へ 民主、各党に

各紙によれば民主党は23日の衆院議院運営委員会理事会で、国会議員の歳費を2年間にわたり、年間300万円削減する案を各党に提示した。各党は持ち帰って検討する考えを示した。自民、公明両党などは削減する方向では一致しており、今後は与野党で削減の額や期間を協議するという。

<バイオマス発電>

バイオマス発電使い除染 環境省、4月から実証実験

鴻池組や鉄建などはそれぞれバイオマス(生物資源)発電システムを活用した除染技術の実証実験を4月から始めると各紙が報じた。放射性物質を含む稲わらや草木をガス化させるなどして容積を減らすと同時に、ガスや熱で蒸気を作り発電するという。
 
TOHO-NEWS 2012年3月22日 印刷
2012年 3月 22日(木曜日) 16:57

<除染による空間線量減>

除染で空間線量率50%減 福島市の農地や道路

福島県は22日、福島市大波地区の農地や道路、森林、草地などについて除染モデル事業を実施した結果、農地と道路の空間線量率が50%程度低減したと発表したと各紙が報じた。一方、草地や森林は20~30%程度の低減にとどまった。住宅地については40%程度の低減率となった。県によると、農地や道路は表土除去や高圧洗浄ができるものの、草地や森林は草刈りや落ち葉除去が主な除染手段のため、低減率が小さいという。 

<東電 企業に再通知>

東電値上げ 「契約期間は拒否可能」 企業に周知せず

東京電力が、4月から予定している企業向け電気料金の17%値上げについて、値上げを拒否できることを契約者に知らせていなかったことが21日までに分かったと各紙が報じた。枝野経済産業相は同日の閣議後記者会見で東電の姿勢を批判し、契約者への説明を徹底するよう指示したことを明らかにした。該当する企業は全体の75%にあたる16万8000件にのぼるという。

<地方都市・中山間地地震対策>

中央防災会議が地方の地震対策 孤立集落・高齢者への支援整備を

地方都市や中山間地の地震対策を検討してきた中央防災会議の専門調査会は22日、支援受け入れ体制を平時から整え、孤立の恐れがある集落の高齢者への配慮などを求める報告をまとめたと各紙が報じた。報告は、地方や中山間地の一部は災害対応に限界があると指摘。外部の支援が重要なため、他自治体の応援職員の業務をあらかじめ整理し、作業スペースも確保しておく必要性を強調している。

<原子力規制庁>

原子力規制庁の1日発足断念 原発監視、当面は保安院

野田政権は、新たに原発の安全規制を担う原子力規制庁の4月1日発足を断念したと朝日新聞が報じた。規制庁設置を盛り込んだ原子力安全改革法案の審議入りにめどが立たないため。法案には「原発運転は原則40年」といった新基準も含まれ、原発の安全対策の切り替えはずれ込む。

<児童手当>

「児童手当」に改名した修正案、衆院委で可決

現行の「子ども手当」に代わり、20012年度から「児童手当」の名称で現金を給付する児童手当法改正案の修正案は21日、衆院厚生労働委員会で、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決されたと各紙が報じた。高所得世帯には、新たに所得制限を導入した。

<滞納年金保険料徴収>

滞納の年金保険料、強制徴収へ 国税庁が請け負い

国税庁が22日、日本年金機構から年金保険料の滞納者に対する強制徴収の委任を受けたことがわかったと各紙が報じた。実施されれば、2010年1月の制度導入以来、初のケースとなるという。 

<桜開花>

高知で桜開花、全国トップ 平年より1日早く

高知地方気象台は21日、高知市の桜(ソメイヨシノ)が開花したと発表した。気象庁や同気象台によると、ソメイヨシノの開花は全国トップ。高知市の開花は平年や昨年より1日早い。3月上旬は12.8度と平年より高かったことが要因とみているという。

 
TOHO-NEWS 2012年3月21日 印刷
2012年 3月 21日(水曜日) 13:39

<SPEEDI情報を消去>

原発事故直後の拡散予測を消去 メール受信に気づかず 福島県

福島第1原発事故で住民避難に活用できなかったことが問題視されているSPEEDIについて、福島県が事故後の昨年3月15日朝までにメールで送られた放射性物質の拡散予測をなくしていたことが21日までに分かったと各紙が報じた。県はメールの受信に気づかず、データを消去していたという。

<地下鉄サリンから17年>

地下鉄サリン事件 17年 事件は終わらず

13人が亡くなり、6千人以上が重軽症となったオウム真理教による地下鉄サリン事件から17年の20日、職員2人が死亡するなど多くの被害があった東京メトロ霞ケ関駅で慰霊式が開かれたと各紙が報じた。献花し「事件はまだ終わっていない」と思いを新たにした被害者の姿もあったという。

 

<春一番>

「春一番」吹かず 関東で12年ぶり 気温上がるも風弱く 気象庁

立春から春分の間に吹く暖かい南風「春一番」が、関東地方では2000年以来12年ぶりに吹かなかったことが21日までに、気象庁の観測で分かったと各紙が報じた。今年は近畿、東海地方でも観測されなかった。春一番は、立春から春分かけて吹き、春の訪れを感じさせる風として知られる。関東地方の場合は、日本海に位置する低気圧に向かって毎秒8メートル以上の南風が吹き、気温が上昇することが条件という。

 

<センバツ開幕>

センバツ開幕「日本の底力、絆を」と力強く宣誓

第84回選抜高校野球大会(日本高校野球連盟、毎日新聞社主催)が21日、兵庫県西宮市の甲子園球場で開幕したと各紙が報じた。東日本大震災の苦難を乗り越えて出場した石巻工(宮城)など東北勢も元気にグラウンドを踏みしめた。震災で学校が津波に襲われ、大きな被害を受けた石巻工の阿部翔人主将が「届けましょう、感動、勇気、そして笑顔を。見せましょう、日本の底力、絆を」と力強く選手宣誓した。

 

<振り込め詐欺を自動検出>

振り込め詐欺を通話から検出する音声技術を開発 富士通と名大

各紙によれば富士通と名古屋大学は19日、電話の会話を分析することで、過信状態(相手の説明内容に対する考察能力の低下)に気付いていない状態を自動検出する技術の開発に成功したと発表した。心理的抑圧を受けている場合は発声が不明瞭になることがあるため、キーワードの検出のみでは検出精度が不十分だった。こうした状況を踏まえ、両者は声の高さと大きさの変化を検出することで過信状態らしさを推定する技術開発したという。

 

<天下り監視委初会合>

天下り監視委が月内に初会合 政府、委員長ら任命

政府は21日付で、国家公務員の天下りを規制する再就職等監視委員会委員長に弁護士の羽柴駿氏を、同委員に慶大大学院教授の伊東研祐氏ら4人を任命したと各紙が報じた。同委員会は2008年12月の設立以来、与野党対立のあおりで委員長と委員全員が空席という異例の状態が続いていた。月内にも初会合を開催する見通しという。

 
TOHO-NEWS 2012年3月20日 印刷
2012年 3月 20日(火曜日) 00:00

<上場会社震災特損4兆円超> 

震災特損 上場1356社4兆円超計上 東電が半分強

東日本大震災以降、震災関連の特別損失を計上した上場企業が計1356社に達し、損失額の合計が4兆703億円に上ることが、東京商工リサーチの調べで20日までに分かったと各紙が報じた。最も損失額が大きかったのは東京電力で2兆964億円に達し、全体の半分強を占めた。次いで、東北電力1731億円、JXホールディングス1374億円、住友金属工業743億円を計上した。

<福島第二原発1号機> 

福島第二原発1号機 30年超認める 保安院

各紙によれば経済産業省原子力安全・保安院は19日、4月20日に運転開始から30年を迎える東京電力福島第二原発1号機について、東電が提出した今後10年間の運転管理方針を認める審査書案を専門家会合で示した。東電は東日本大震災の津波で被災した同原発の原子炉の冷温停止を維持する管理を続ける。ただし、今後原発を再稼働させる場合は、改めて保安院の評価を受ける必要があるという。

 

<役場福島帰還決議>

双葉町役場、福島帰還を決議 町長は慎重姿勢

福島県双葉町議会は19日、福島第1原発事故で埼玉県加須市に移している役場機能を、6月末までに福島県内に戻すよう町に求める決議を全会一致で可決したと各紙が報じた。井戸川町長は移転の必要性を認めつつ、県内外どちらに移るべきかについては明言を避けたという。

 

<「胸水」治療終了>

天皇陛下が再度治療 胸水ほぼ抜き取る

各紙によれば天皇陛下は20日、心臓手術の合併症で胸の内部にたまった胸水を針で抜く「穿刺」と呼ばれる治療を宮内庁病院で受けられた。7日に続き2度目。宮内庁によると、今回は多く残っていた左胸も含め両胸から前回をやや上回る量を抜き、無事、ほぼ全て排液できたという。7日と同様、東大と順天堂大の合同チームが治療に協力したという。

 

<東京都1世帯2人割れ>

1世帯2人割れ 1.99人、独居高齢者が増加 東京都

東京都は15日、1世帯当たりの平均人数が1.99人となり、1975年の調査開始以来、初めて2人を下回ったと発表したと各紙が報じた。都は「元々単身の若者が多い上、独居高齢者が増加している」と分析している。孤立死・孤独死が問題化しているほか、首都直下地震への備えでも懸念材料だという。都は、独居高齢者を見守る仕組み作りを強化していくとしている。

<タイで「ミラージュ」>

タイで「ミラージュ」発表 日本へは今夏 三菱自動車

三菱自動車は20日、新型グローバルコンパクトカー「ミラージュ」をタイの新工場で生産するとともに、3月28日からタイ市場に投入すると発表したと各紙が報じた。タイで生産する新型ミラージュは日本市場にも投入する予定。新型ミラージュは、自動車市場の拡大が見込まれる新興国のエントリーカー、日米欧の成熟国の環境対応車という双方のニーズを一つの商品として具現化するため開発したグローバルコンパクトカー。

 
6次産業に特化したファンドも誕生!! 今後10年間で市場規模10兆円を目指す!! 印刷
2012年 3月 13日(火曜日) 16:30

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  少子高齢化、担い手不足、市場の縮小など、さまざまな問題を抱える日本の農業。それにともない、農山漁村の一部は〝限界集落〟となり、存続の危機に立たされている。そうしたなか、昨年3月1日に農林水産省は「六次産業化法」を施行し、農林漁業者を支援する新たなスキームを立ち上げた。はやくも1年が経過したが、その現状はどのようになっているのだろうか。6次産業化の事例とともにリポートしたい。

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施行から1年が経過

六次産業化法の成果は!? 

日本の農業は窮地に立たされている。国内食品マーケットは80・4兆円(平成7年)から73・6兆円(平成17年)にまで減少し、農業産出額は11・5兆円(平成2年)から8・3兆円(平成18年)に、さらに農業所得は6・1兆円(平成2年)から3・4兆円(平成17年)に減少しているのだ。

しかし、農山漁村には農産物、バイオマス(稲わら、食品廃棄物、未利用間伐材)、経験・知恵、自然エネルギー、風景、伝統文化など、豊富な地域資源がある。こうした資源活用すれば、新たな産業を創出できるのではないか。ということで昨年3月、農林水産省は「六次産業化法」を施行し、6次産業化による農林漁業者の支援をスタートさせた。6次産業とは東京大学名誉教授の今村奈良臣氏が提唱した造語で、農畜産物、水産物の生産だけでなく、食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)にも農業者がかかわわることで、農業の付加価値を高め、活性化させようとする概念のこと。1次、2次、3次の数字をかけあわせて「6次」と名付けられたとされている。

では、六次産業化法によって、農林漁業者はどのような支援を受けることができるのだろうか。6次産業支援に関する認定は大きく総合化事業計画と研究開発・成果利用事業計画の2種類に分けられる。まず総合化事業計画とは農林漁業者が農林水産物や副産物の生産や加工・販売を一体的に行う事業のことで、農林水産大臣に認定された場合は無利子融資を受けられるチャンスがふえたり、その償還期限を延長したりしてくれるという。さらに直売施設などを建てる際の農地転用等の手続きもカンタンになるとか。食品の加工、販売にともなう資金も債務保証の対称にしてくれるというものだ。なお、対象となるのは認定された農林漁業者だけでなく、その取り組みに協力する民間事業者(促進事業者)も含まれる。

一方、研究開発・成果利用事業計画は民間事業者が農林漁業者の6次産業に関する研究開発や成果を利用する事業計画のことで、認定されると新品種の品種登録に要する費用を4分の1にしてくれる。あらに研究開発やその成果をたしかめるための施設づくりにあたって、農地を使う場合は転用の手続きを簡素化してくれるという。また、食品の加工、販売に関する資金調達にあたっても、政府機関が保証してくれるという。

また、認定を受けた事業者は「未来を切り拓く6次産業創出総合対策」といった補助金を活用することもできる。たとえば、ソフト面では「新商品開発、販路開拓等に対する補助」の場合、通常は2分の1補助なのだが、認定を受けることで3分の2補助を受けられるという。ハード面でも「農業法人等が新たに加工・販売等へ取り組む場合の施設設備に対する補助」(補助率:2分の1等)に関しては、認定者のみが申請することができるという。

しかし、農林漁業者が自身で事業計画を立て、認定を受けることができるのだろうか。仮にチャレンジしたとしても、その煩雑さの前に挫折してしまい、宝の持ち腐れになってしまう恐れもあるのではないか。そこで、農林水産省では全都道府県に6次産業化プランナーや6次産業サポートセンターを設置し、6次産業化を構想段階から認定までの計画策定を支援する仕組みを用意している。

六次産業化法にもとづく認定事業者の数は平成24年1月末現在で合計410件に。

「当初の予想よりも多くの農林漁業者の方に活用いただくことができた」と農林水産省庁食料産業局産業連携課専門官の朝倉勇一郎氏は話す。地域別の内訳を見てみると、近畿が111件と多く、都道府県別でもベストファイブに和歌山、滋賀、兵庫が入るという健闘ぶりだ。「近畿の農林漁業者が積極的だったことに加え、6次産業化プランナーの活躍が大きかった」と朝倉氏は説明する。では、各地には具体的にどのような六次産業化の取り組みがあるのだろうか。以下、いくつかの事例を紹介したい。

こだわりのそばを生産・加工・販売

消費者と顔の見える関係を構築(北海道倶知安町)

「6次産業という言葉は新しいが、それこそが農家本来の姿のことだ」―。そう話すのはアオキアグリシステム(有)の青木一廣社長。同社では34㌶の土地で在来種の「牡丹ソバ」を生産。01年からそば粉の加工・販売をはじめると同時に、そば店「農家のそばや羊蹄山」を開店、最近では乾麺の直売・ネット販売を通しても実績を上げている。

その拠点である虻田郡・倶知安町は、札幌市から西へ50㌔㍍、羊蹄山麓に位置する畑作の盛んな地域だ。この土地でもっとも古い生産農家の4代目という青木社長のところでは、農業のかたわら80年にわたりデンプン製造業を営んできたという。本格的な事業開始にあたって、同社では国の支援も得て農業フェアなどで求人を行い、東京と京都から熱意のあるふたりの従業員を採用。加工設備も補助金などを活用して揃えたという。

「寒暖の差が激しく、近くに名水百選にも選ばれている「羊蹄山の湧き水」があるこの地はソバづくりに最適。収穫されたソバの実は風味豊かで栄養タップリだ」と青木社長。同社ではこれを高湿低温庫で貯蔵してから石臼で製粉し、全国約30店のそば屋に卸しているという。また、同社直営のそば屋では毎日製粉し、香りある挽きたてそばとして提供しているという。

このように自社で加工し、販売するのは「消費者との距離を縮めるためだ」と青木社長は話す。そして「農家としてプライドを持ってやるからには、最終消費者から支持される仕事がしたい。もともと農村には加工技術が大なり小なり眠っているはず。それが廃れたのは化学肥料に依存し、単作によって効率性を追求するようになったからではないか。6次産業化とはそれを打開する農家の原点回帰のようなものだと思う」と。

そんな青木社長の夢は自社製品を海外に輸出することだ。そのため、現在は生産管理の手段として世界で通用する基準「グローバルギャップ」を取り入れる用意をすすめているという。「第一次世界大戦後の北海道には、海外にデンプンや雑豆などを輸出し、外貨を稼いだという歴史がある。日本の農業が世界に出るということはまったく荒唐無稽なことではないと思う」と青木社長。その思いを胸に「世界を見据えよう、そのために何をするべきか考えよう」と周囲の生産者たちにも呼び掛けている真ッ最中だ。

 

問い合わせ

アオキアグリシステム(有)

℡0136-23-2308

北海道虻田郡倶知安町字富士見312番地

http://www.youteizan.com/

 

キノコ狩り体験や直売所による販売

少数出荷のノウハウで新作物にも挑戦(千葉県佐倉市)

佐倉きのこ農園は1年を通してシイタケ狩りとバーベキューが楽しめる体験型観光農園。来園者への直接販売に加え、地元量販店への出荷も行っている。

開園以来のポリシーは完全無農薬。「椎茸栽培は害虫とカビとのたたかいだが、私たちは害虫とカビが発生する度にすべて手作業で取り除き、農薬、殺虫剤、成長促進剤などを一切使用せず、地下50㍍の天然水のみで栽培している」と齋藤勇人園長は話す。そして「消費者は味の違いに敏感。美味しくないとわかれば即座に口コミなどで売上げに影響が出る。だからこそ、一切の妥協は許されない」と。

こうして栽培された「長生き椎茸」は肉厚、正形、ジク太で傘の閉じた極上品。料理に使ってもいいが、おススメは素材の魅力をダイレクトに味わえる炭焼きか鉄板焼きだそうだ。

出荷は県内スーパーを中心に2、3個単位から行う。スーパーなどへの出荷は普通、少なくとも数十個単位からだが、同園では毎日、販売現場と毎日緊密に連絡を取り合い、その日の見込み数に細かく応じることで、廃棄ロスなどを極力減らすことに努めているという。

丁ねいな栽培方法と小回りの効く販売スタイル、それが同園の売上げの原動力となっているようだ。齋藤園長は「今後は培ったマーケティングデータをもとに新たな作物にも挑戦してみたい」とさらなる意欲を燃やしている。

 

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「各地のキノコ農家や菌メーカーを訪ね栽培法を確立した」と齋藤園長

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肉厚長生き椎茸<松>の箱詰は3150円。オンラインショップでも販売されている

 

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とれたシイタケは園内のバーベキューガーデンですぐに焼いて食べられる

問い合わせ

(有)佐倉きのこ園

〒285‐0808千葉県佐倉市太田2395

℡043‐486‐3987

http://www.kinokoen.jp/

 

自然循環農業への取り組みを機に

ヤギの乳製品を加工販売!!(福井県池田町)

福井県今立郡で有機栽培でコメ・野菜を生産するかたわら、ヤギ飼育と乳製品の加工販売に取り組んでいるのがGORIファーム・TAKARAチーズ工房。カマンベールチーズやヨーグルト飲料などを自家製造に近い形で商品化し、ショッピングセンターの特産品店や地元ホテル、レストランなどで取引している。

「ヤギのミルクは良質のたんぱく質や脂肪、乳糖、ビタミン、ミネラルなどが豊富で、また牛乳より脂肪球が小さいので消化が良く、原乳のまま飲んでも安心」と話すのは生産者の後藤宝さん。

後藤さんは93年に脱サラし、家族5人で神戸からこの地に移り住み、07年からヤギを飼いはじめたという。「有機肥料に使用した「循環型農業」に取り組もうとした際に、ビニールハウスを畜舎に利用でき、牛やブタと比べて初期負担が少なかった」という理由でヤギを飼いはじめたそうだ。さらにこのヤギの乳製品を開発・販売したところ、評判が評判を呼び、収入は2年間で約1・5倍に増えたという。しかも「牧場への来場者が農産物も購入するようになり、売上高の向上につながった」と。ちなみに、ヤギ牧場を経営しているところは珍しく、県内ではここだけ。そんな希少性もヒットの要因となったのかもしれない。

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「安定した生産で展開先をさらに広げたい」と後藤さん

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ヤギのミルクは牛の10分の1ほどと搾乳量は少ないがニーズはそれ以上あるという

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可愛らしいヤギは地元でも人気ものとなっている

 

<問い合わせ>

GORIファーム・TAKARAチーズ工房

〒910‐2511福井県今立郡池田町薮田4‐1‐13
電話・FAX0778‐44‐7626

http://www.yagi-takara.com/

 

官民協同のファンド創設で

6次産業化が進化を遂げる

こうした事例をチェックしてみると、6次産業化が着実に進行していることがわかる。とはいえ、食品関連産業の国内生産額が100兆円規模であるのに対し、6次産業の市場規模は1兆円程度しかない。そこで、農林水産省では今後10年間で食品関連産業の市場を120兆円規模、6次産業を10兆円規模に押し上げるという目標を掲げ、1次産業・2次産業・3次産業の価値連鎖を向上させる取り組みを支援するとしている。その一環として、農林漁業者と2次産業・3次産業事業者に「合弁事業」を後押しするファンドを創設するという。

ファンド名は農林漁業成長産業化ファンド(仮称)で、今年9月に設立される予定だ。国からの出資と貸付による300億円、民間からの出資による30億円を募り、そのうち220億円を地域ファンド(地元金融機関や事業者などで構成)に出資し、そこから6次産業化事業者に出資するという仕組みになっている。地域ファンドはプロジェクトごとに立ち上げることが可能なので、地域一丸となって地域資源を活用した特産品づくりを行う場合にも活用することができそうだ。前出の農水省の朝倉氏は「制度融資や補助金に加え、ファンドによる支援を展開することで、事業者はより柔軟に資金を活用することができる。これを機にハード面などの設備投資はもちろんのこと、海外などの販路開拓にもチャレンジしてほしい」とエールを送る。

あらためて認定事例の内訳を見てみると、農畜産関係は多いものの、林産物関係や水産物関係、研究開発・成果利用事業計画の認定件数はまだまだ少ない。ということは、こうした分野にはまだまだ活用されていない地域資源が豊富にあるはずだ。6次産業化でこうした眠った地域資源をフル活用していけば、農業が日本の経済を牽引することができるかもしれない。

最終更新 2012年 6月 18日(月曜日) 11:13
 
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