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Home ニュース ニュース特集 慶応義塾高校の中国語教師を経て ふたたび音楽活動をスタート!! 日中の音楽交流を目指す!!
慶応義塾高校の中国語教師を経て ふたたび音楽活動をスタート!! 日中の音楽交流を目指す!! 印刷
2011年 11月 17日(木曜日) 17:13


2011111701〈ゲスト〉

瞳みのる(ひとみ・みのる)

〈プロフィール〉

1946年京都生まれ、本名は人見豊(ひとみみのる)。1967~71年まで「瞳みのる」の名で、ザ・タイガースのドラマーとして在籍。グループ解散後、芸能界から完全引退。京都府立山城高等学校定時制卒、慶應大学文学部中国文学科卒、同大学大学院修士課程修了。慶應高等学校で教鞭をとるかたわら、同大学博士課程3年時、北京大学へ2年間留学。中国文学特に唐詩を専攻し、実作も行う。京劇と日舞のコラボレーションのプロデュースや英・米・日・中の歌曲の作詞・作曲・翻訳など行っている

 

「ザ・タイガース」のドラマー「ピー」こと瞳みのる氏。ザ・タイガースの解散の後に芸能界を完全引退。慶応義塾大学で中国語を学び、中国語教師として高校の教壇に立ちつづけてきた。そして、今秋にはザ・タイガースが事実上復活、ふたたび音楽活動に全力を注いでいるという。解散から40年の時を経て、瞳氏の音楽観はどのように変化したのか。そして、中国にどのような思いを抱いているのか。そのあたりを聞いてみた


 「ザ・タイガース」のドラマーから中国語教師に転身


編集長 瞳さんといえば、「ザ・タイガース」のドラマーとして知られています。このほど、ザ・タイガースも事実上復活を遂げ、今はツアーの真ッ最中とのことですが、ザ・タイガースが解散してからはどのような活動を展開していたいのですか。

瞳 とにかく勉強して、解散の翌年には慶応義塾大学に入りました。そして、大学に入ってからもひたすらに勉強しました。音楽活動に取り組んでいたことで、周囲と知識の差がありすぎると痛感したからです。

編集長 大学では中国語を専攻されていたそうですが、どうして中国語を選んだのですか。

瞳 私の祖父は日露戦争、父は日中戦争に従軍していました。私は戦後生まれだったこともあって、正直いってそれぞれの国に対する贖罪の気持ちはあまりありませんでした。しかし、父から当時の日本兵が中国人にしたことを聞いたりするうちに、徐々に中国に申し訳ないことをしたという気持ちを抱くようになりました。ある意味、中国語を選んだのは間接的な謝罪の気持ちがあったからなのかもしれません。

とはいえ、本当に中国語を学ぶことで、大きく成長できたと思っています。人は同じところにとどまっていてはなかなか成長できません。つねに動き、いろんな視点を持つことで成長できるのです。それは語学に関しても同様です。たとえば、英語、日本語、中国語ができると、さらにその違い・共通点が発見できる。私にとって中国語は新しい視点のひとつになったのです。

編集長 北京大学にも留学されていますね。そのときの印象的だったエピソードはありますか。

瞳 留学したのは81年です。当初はギャップに大いに困惑しました。思想面でも文化大革命の影響が残っており、市民同士も相互監視しているような状況だったのです。

編集長 その後、慶応高校に漢文や中国語の教師として勤めたわけです。

瞳 おかげで、多くの生徒たちとふれあいながら、自分自身も成長させてもらいました。また、日中の高校生の交流事業などにも力を入れることができました。本当に有意義な時間だったと思っています。

 

文学的要素を加えながら音楽を見つめ直す

 

編集長 最近は明治時代の音楽に興味をお持ちとのことですが。

瞳 音楽を生業にしている以上、日本における西洋音楽の創世記だった明治時代の音楽を知りたいと思い、資料を探しはじめたんです。

編集長 西洋音楽はどのように日本に入ってきたのですか。

瞳 日本における西洋音楽のルーツは、浦賀に来航したペリーの艦隊音楽だといわれています。それ以来、西洋音楽は着実に日本音楽のなかに取り入れられてきたのですが、メロディーは同じように演奏できても、歌詞をどうするかという問題がありました。そこで、日本風に歌詞を翻訳した西洋音楽が広まり始めたのです。当時は「富国強兵」の時代だったので、そういったニュアンスの歌詞が多いのも特徴です。

編集長 翻訳した内容は原曲とどのように異なるのですか。

瞳 国境を越えた歌のなかに「旅愁」という曲があります。原曲は150~200年前のアメリカの民謡「Dreaming of Home and Mother」です。これを19世紀の終わりに熊本の教師で作詞家の犬童球渓が「旅愁」として訳して日本に伝えました。それを日本に留学していた李叔同がさらに漢訳し、「送別」として中国に広まりました。原曲は母と故郷を愛しむ歌でしたが、日本語訳になると原曲に登場しなかった父親が登場します。そして、中国版になると、友人との別れの歌になっています。このように多くの歌は国によっていろんな表情を見せるようになっていったのです。

編集長 日本における歌詞の翻訳の特徴についてお聞かせください。

瞳 日本の翻訳は非常に優れていると思います。そもそも日本は古くからアレンジするのが得意な民族なのです。鎖国政策下においても、出島において文化・情報の取捨選択を行い、それらを日本流にアレンジしてきたわけですから。たとえば、日明貿易で輸入されたウチワは扇子として日本に取り入れられたものです。そのほかにも、日本は西欧の体育、美術、音楽といったものを取り入れ、独自のアレンジをして義務教育として取り入れたりしてきました。

編集長 歌は時代とともに変わったり、なくなったりするものなのでしょうか。

瞳 多くの歌は使われている言葉や概念が時代遅れになるにつれて、歌われなくなります。あの有名な「蛍の光」についても本当は4番まであるのに、最近では一番しか歌われなくなりました。ちなみに、原曲はスコットランドのものなのですが、日本版の歌詞は原曲とはまったく違うものになっています。中国でも翻訳されているのですが、中国では中久闊を叙すことをテーマにした歌詞になっています。

 

解散40年を経てグローバルなアーティストに

 

編集長 ザ・タイガースが解散して40年が経過しましたが、あらためて音楽に向き合っているような感じですね。

瞳 音楽活動を終えて、一時はドップリと文学にハマッていました。そして、今はその昔に原点に立ち返って音楽を見つめ直しています。とくに歌詞の大切さを感じています。音楽に深みを持たせることができるのは、やはり歌詞ですから。

編集長 最近は日本と中国を往き来しながら、日中の歌詞をそれぞれ翻訳したりしているそうですが、中国のコンテンツについてどのような印象を持っていますか。

瞳 中国には歴史、文化が豊富で、古典だけでも三国志、水滸伝、金瓶梅、西遊記などの魅力的なコンテンツがあります。一時は鎖国のような状態だったにもかかわらず、世界中の華僑・華人が自国にあらゆる文化・情報を持ち込んでいるので、中国には実に多様な文化が存在しています。また、人口が多いだけに才能のある人材も豊富にいるように思います。実際、テレビドラマなんかを見ても、実におもしろい作品がたくさんありますしね。もし中国のエンターテイメントが日本の音楽・芸能などのマーケットになだれ込んできたら、日本の芸能界は間違いなくパニックになってしまうでしょうね。

一方で文化大革命などの影響で、中国では知られていない日本のカルチャーも多数あります。たとえば、僕らやビートルズが人気の絶頂期にあったとき、中国は文化大革命の最中でしたから、中国ではザ・タイガースのことを知っている人はまずいないでしょう。ですから、いつかは中国で大規模なコンサートも開催してみたいと思っています。

編集長 グローバル化がすすむにつれて、瞳さんのように多くの国の文化や言語、情報を取り入れて、独自のアレンジを加えるアーティストが必要とされてくるようになりますね。

瞳 ザ・タイガースの活動は期間限定の活動ですが、その後も個人で活動を展開していきたいと思っています。その一環として、来年の2月から5月くらいの間に全国各地で「老虎再来」という中国文化や音楽をテーマにしたトークライブも開催していく予定です。ちなみに、このタイトルはマネージャーの中井國二氏に、ザ・タイガースの復活にあたっていいキャッチコピーはないかと聞かれて、その場で考え出した言葉です。いっそのこと曲もつくろうというで、同名の曲もつくりました。

―ところで、最近は地域おこしにも興味をお持ちだそうですね。

瞳 「花の首飾り」を作詞した菅原房子さんという方がいらっしゃるのですが、その方の出身地は北海道八雲町というところです。というわけで、八雲町にこの曲を使って、町おこしに取り組んでみたらどうかと提案しているところです。今度の北海道公演には町長さんたちを呼んで、是非とも直接「花の首飾り」を聞いてもらい、どう町おこしにつながるかをイメージしてほしいと思います。

編集長 ザ・タイガースのメンバーが中国や地域おこしにかかわっているなんて本当にビックリですね。これからも精力的に活動をつづけてください。

2011111702

 

〈編集長口評〉

「ザ・タイガース」は団塊世代であれば、誰もが知っているバンドだ。そのドラマーが中国語教師という職業を経て、ふたたび音楽活動を再開したのだからビックリ仰天である。その経験を生かして、日中の懸け橋になるような音楽活動を展開してほしいと思う。

最終更新 2011年 11月 17日(木曜日) 17:34