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東方通信社発行 学苑報
最新の〝巨大インフラ〟を徹底活用!! 「新東名」でまちおこし!! |
2012年 6月 18日(月曜日) 11:01 | |||
4月14日に部分開通した新東名高速道路。東名高速道路の事故や渋滞を緩和するために、東名に平行してその内側に造られた高速だ。現在は静岡県部分のみの開通となっているが、2020年度には神奈川県海老名市から愛知県豊田市を結ぶ全長254㌔㍍の高速道路になるという。はたして、この最新の〝巨大インフラ〟は地域にどのような影響をもたらすのか。新東名周辺の自治体の声を中心にまとめてみた。
ついに部分開通をはたした新東名東京―名古屋間の移動がスムーズに 渋滞が多く、事故発生率も高いといわれる東名高速道路。この問題を解決するために、4月14日、ついに新東名高速道路が部分開通した。開通したのは御殿場JCT~三ヶ日JCT間の約162㌔㍍。この後、2014年度には浜松いなさJCT~豊田東JCTの約53㌔㍍が開通し、最終的には2020年度に伊勢原北IC~御殿場JCT間が開通することで、海老名南JCT~豊田東JCT間の全長254㌔㍍の高速道路が完成する予定になっている。 新東名は東名の内側に造られ、山間部の合間を縫うように敷設されている。その道はカーブが少なく、走行距離も東名に比べて約10㌔短縮されている。新東名を運営する中日本高速道路(株)の発表によると、新東名御殿場JCT〜三ヶ日JCT間の開通後1カ月間の平均交通量は、平日が1日当たり4万1000台、休日が同5万7000台。東名高速との合計は同8万3500台に上り、全体の交通量は20㌫増になったという。 全体的な交通量の増加はもちろんのこと、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)に設置された商業施設にも注目が集まっている。新東名に設置された7カ所の複合型商業施設「NEOPASA(ネオパーサ)」の延べ来場者数は593万人を記録し、SA・PA計13カ所の売上げの合計は28億円に上ったという。また、東名の並行区間(20カ所)を合わせた売上げは39億円で、前年同期の2・4倍になったという。 ちなみに、施設名のネオパーサは新しいという意味の「NEO」にPA、SAを組み合わせて名付けられたもの。一般道からも自由に往き来できる「スマートインターチェンジ」(高速道路の本線やサービスエリア、パーキングエリア、バスストップから乗り降りができるように設置されるインターチェンジ)を採用しており、早くも地域住民の新たな買い物スポットとして機能しているようだ。現に新東名・駿河湾沼津(静岡県沼津市)SAで地元の買い物客に話を聞くと「新鮮な魚介類や野菜を販売しているコーナーがあるので、日常的に買い物に来ている」という返事が。 もちろん、ネオパーサには観光地としての魅力もタップリ。たとえば、人気アニメ「機動戦士ガンダム」をデザインに取り入れるなどした衣料品店や有名ブランド「ビームス」の飲食店、地域ごとの特産品を販売する店舗など合計121店が出店しているという。
部分開通した静岡県では官民がまちおこしに挑戦 新東名の部分開通に合わせて、周辺自治体ではさまざまな取り組みが行われている。それもそのはず、高速道路が開通すれば、走行費用や輸送時間の短縮、交通渋滞の減少といったメリットだけでなく、交流人口の拡大といった恩恵を受けることができるからだ。とくに、すでに新東名が開通した静岡県では官民それぞれが新東名を生かそうと奮闘している。 そのひとつが静岡県による新東名活用農芸品等販路拡大事業だ。新東名SAなどで農産物や農産加工品を販売し、同時に消費動向を調査するというもの。また、SAなどを拠点とした周辺産地の散策モデル・ルートの提案、ウォーキングイベントなども開催するという。農産物販売の開催時期は夏(7月)、秋(10月)、冬(2月)の週末で、夏はSA(静岡)とPA(清水、藤枝、掛川、森)で7月14、15日に開催予定だという。一方、ウォーキングイベントは秋(10月)の週末に、SA(沼津・静岡・浜松)とPA(清水、藤枝、掛川、森)のうち実施可能な場所で、農産物販売と同時に開催される。 また、新東名によって、静岡県の中山間地域へのアクセスが向上することから、県では『農村ふれあいガイドブック+クロス』を発行し、無料配布している。冊子を開くと、〝平成のヤジキタ〟が新東名を利用した道中で、県内21カ所の中山間地域や農村地域を紹介・体験しながら、施設や郷土の物産などを紹介している。県内市役所、町役場の窓口、県内農林事務所農村整備課(賀茂、東部、富士、中部、志太榛原、中遠、西部)に設置されているので、ドライブの際には是非ともゲットしてほしい。あまり知らなかった静岡の魅力が盛りだくさんの一冊だ。 新東名が内陸部にできたことで、新たな地域活性化策も思案されている。事実、静岡県では「新東名の沿線に帯状に広がる地域を『内陸のフロンティア』として、IC、SA、PA周辺地域で新しい産業、自然と共生するライフスタイルなどを提案していく」そうだ。すでに、その一環として里地、里山の復元や内陸部と都市部の連携強化といった具体案が議論されている。 では、民間の動きはどうだろうか。その代表例がNPO法人「富士の国 農家直売協同組合」の取り組みだ。このNPO法人は20軒の農家によって結成された組織で、現在は「富士の国ブランド」を掲げて、地元産品の販売促進を展開中だ。「2年前に新東名が開通するということを知り、SAやPAで産品を販売したいと考えた」と話すのは同NPO代表で、青木養鶏場を営む青木善明さん。メンバーについては「農業法人協会の会長を務めていることもあって、スピーディーに地元の優良農家を束ねることができた」そうだ。 しかし、いくらいい産品を用意できても、メンバーたちは販売に関してはズブの素人だった。そこで、最初は「すでに東名のSAやPAで販売を経験している農家の人たちから話を聞いたり、現地を視察したりして、SA・PAならではの販売方法を学んだ」という。たとえば「SA・PAにはトイレだけのために立ち寄るお客もたくさんいる。そうした人たちの目を惹き、ササッと買ってもらえるような体制づくりが重要だ」と青木さん。具体的には「短時間でも目に付くような陳列」や「価格をワンコインにして、素早く買ってもらえるようにすること」がポイントだとか。 こうした研究の末、青木さんたちは新東名が開通する前に、東名の富士川SAと浜名湖SAで2年間にわたって試験販売を実施。顧客からの評判が上々だったため、念願叶って新東名でも毎月第3土・日に清水PA、浜松SAで「農匠マーケット」という販売イベントを開けるように。イベント当日はメンバーたちで協力しながら、自慢の鶏肉やニジマス、路地野菜、果物、ソーセージや餅などの加工品を販売しているそうだ。「5月には月間100万円という売上目標を達成することができた。これからも新東名をフル活用して、〝地産他消〟を推進して、富士の国の魅力をアピールしつづけたい」と青木さんは意気込んでいる。
これから開通予定の自治体でもまちおこしの芽が成長中!! もちろん、これから道路が開通される地域も期待に胸を膨らませている。神奈川県秦野市もそのひとつだ。「新東名が開通すれば、東京―秦野間は40分で結ばれる。この立地を生かした取り組みを展開したい。高速道路が開通予定の地域は調整区域で、まだどういう施設ができるかはわからないが、秦野の美しい田畑と山林を生かしていきたい」と話すのは秦野市政策部新東名周辺整備担当の山本隆浩さん。 たとえば、秦野には名水百選のひとつである「護摩屋敷の名水」があるが、新東名が開通すれば、この水源を活用したビジネスに拍車をかけることもできそうだ。また、秦野といえば「八重桜」も忘れてはいけない。とりわけ秦野の八重桜は「桜漬」などの原料として使われることで知られており、その生産量は中部地方一だとか。そのほかにも、落花生やお茶、カーネーションやバラといった産品が揃っており、都心部とのアクセスが便利になることで、イッ気に市場が広がりそうだ。そのため「すでにSAかPAは設置されることになっているが、住民からはあわせて直売所を設けてほしいというリクエストが数多く寄せられている」という。また「スマートインターチェンジを設置することで、地域住民にとっても使い勝手のいいSA・PAを目指したい」と山本さんは意気込んでいる。 新東名の影響は未開通地域の愛知県東部(東三河)にもおよんでいる。地元紙『東愛知新聞』によると「ゴールデンウイーク(GW)2日目の29日、東三河の行楽地には、『静岡』『沼津』『山梨』ナンバーの乗用車が続々。とくに豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)は『静岡』ナンバーだけで、200台近くが来園し、関係者を驚かせた」そうだ。 また、新東名が開通予定の新城市観光協会事務局長の安彦誠一さんは「平成26年度の新東名の開通に合わせて、高速道路近くに道の駅が完成する。こうした拠点を活用できるように、今のうちからブランド開発と着地型観光の商品づくりに取り組みたい」と意気込んでいる。 そもそも、この東三河地方(豊橋市を含む8市町村)の人口は県全体の1割程度。そのため、愛知県の中心地である名古屋周辺との行政格差、財政格差が問題になってきた地域でもある。そこで、愛知県は4月2日、東三河の地域資源を生かした振興施策を推進していくために、豊橋市に「東三河県庁」を設置。本庁機能の一部を移管したり、権限移譲したりして、スピーディーな政策実行をはかっていくとしている。新東名と東三河県庁の動きが連動すれば、東三河が新たな観光スポットとして浮上する可能性も十分にありそうだ。 新東名開通で多くの人々が盛り上がる一方で「人口減のなか、新東名の総事業費約4兆4000億円を返済するのは難しいのではないか」といった批判もある。だが、新たに開通した新東名に大勢の人たちが押し寄せているのは間違いない。総事業費をペイしてしまえるだけの経済効果を上げるためにも、これからも高速道路周辺の地域が一丸となって、新東名を生かしたサービス、商品開発に取り組まなければならないだろう。
満員御礼の「NEOPASA(ネオパーサ)」!! 新東名が開通して1カ月が経過した。そろそろ交通状況も落ち着いているかと思い、東京からもっとも近い新東名のSA「NEOPASA(ネオパーサ)駿河湾沼津(下)」に出掛けてみた。 目的地に着いてみてビックリしたのが、平日の夕方だったにもかかわらず、駐車場が満車になっていたこと。クルマの多くは「静岡」「沼津」ナンバーだったので、静岡西部あるいはスマートインターチェンジを利用して来た地元住民がいかに多いかがうかがえる。 施設内の店舗はご当地グルメや産品を扱うセレクトショップ「ロコマルシェ」やドッグラン&ドッグカフェを併設したベーカリー「箱根ベーカリー―セレクト―」、桜エビのかき揚げが楽しめる「かき揚げ蕎麦 酒井」など9店舗。ロコマルシェにはご当地スイーツのほか、その場で魚を捌いてくれる鮮魚店や野菜の直売所も設けられており、まさに選り取りみどりの充実ぶり。こちらも平日にもかかわらず、大勢のお客で賑わっていた。 施設からは駿河湾を見渡せるようになっており、外にはオーシャンビューテラスも設けられている。イートインスペースからもオーシャンビューを楽しめるようになっているので、デートスポットとして人気を呼ぶこと間違いナシ。早くもオーシャンビューを楽しめる窓際の席には若いカップルの姿があった。まさにSAそのものが目的地になっているような感じだ。
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最終更新 2012年 7月 19日(木曜日) 12:59 |