米国は4日に245回目の独立記念日を迎え、各地で祝賀行事が開かれた。バイデン米大統領は4日にホワイトハウスで演説し、「米国は戻ってきた」と再び宣言した。ホワイトハウスで千人以上のバーベキューパーティーが行われ、首都ワシントンDCで絢爛な花火が夜空を彩った一方、米南部フロリダ州サーフサイドで崩落したマンションが爆破され解体された。当マンションは先月24日に崩落事故が発生し、これまでに36人が犠牲し、109人が行方不明となったが、10日間にわたる後手にまわった救援を経て、迎えた爆破と解体である。ガレキの下敷きになった100人以上の行方不明者はもう永遠に戻ってこない。
これと同時に、米非営利団体「バイオレンス・ポリシー・センター(Violence Policy Center)」によると、過ぎ去った独立記念日の週末、米国で400回以上の銃犯罪が発生し、少なくとも150人が銃殺された。また、米CNNが5日に報道したところによると、2日から4日までの72時間、ニューヨークで21回の銃犯罪が発生し、26人の命が奪われた。一方、シカゴでも複数回の銃犯罪が発生し、少なくとも14人が死亡し、70人が負傷した。さらに、新型コロナウイルス感染症が発生以来、米国内の銃犯罪が激増し、今年に入ってから現在までの間に、ニューヨークでの銃暴力事件は2020年同期より4割以上も増加した。これら銃犯罪で亡くなった人は永遠に戻ってこない。
言うまでもないことに、米国内で新型コロナウイルスの感染で死亡した60万人以上の命も戻ってこない。米ジョンズ・ホプキンス大学が米東部時間5日に発表した最新データによると、米国で新型コロナウイルスの感染者数は延べ3372人に上り、死者は60万5000人を超えている。
今年の年初、ホワイトハウス入りしたばかりのバイデン大統領は自信満々に、「7月4日の独立記念日は新型コロナから独立を宣言できる日になる。自由な夏、ハッピーな夏を迎えられる」と公言したが、成人(18歳以上)の7割が独立記念日までに1回のワクチン接種を終えるという米政府の目標は未だ達成していない。バイデン大統領は4日の演説で、「感染拡大がもたらした孤立、痛み、愛する人を亡くした悲しみの暗闇から、われわれは抜け出しつつある」と強調しながらも、「闘いが終わったわけではない」と認めている。
米紙「ワシントン・ポスト」の報道では、現在、米国人口の半分以上を占める2000以上の都市と町では、ホワイトハウスの定めたワクチン接種目標に達成していない。それだけでなく、複数の都市や町では、一日当たりの感染者数が伸び続ける傾向にある。
また、米NBCと「ワシントン・ポスト」が合同で実施したアンケート調査によると、30%以上の米国成人(18歳以上)は「絶対にワクチンを接種しない」と答えた。
米疾病対策センター(CDC)の発表では、2日までに、新しい変異株「デルタ・プラス株(正式名AY.1)」による感染例が増加の一途をたどり、全米50の州とワシントンDCにまでまん延し、新規感染の四分の一を占めるようになっている。
感染症によるリスクがまだ続く中、米政府の混乱な対応により、またもどれぐらいの米国民の命を危険にさらしているのだろうか。
戻ってこない人たちのリストには、ほかには白人警官に首を押さえつけられて死亡させた黒人男性のジョージ・フロイド氏、米国移民・関税執行局(ICE)の移民拘留センターに閉鎖され、悲惨な死を遂げた米国境地帯の難民たち――その多くが女性と児童である。
このような背景の下で、軽率に「米国は戻ってきた!」と宣言したことは、米政府が自ら世界を支配しているリーダーシップを証明しようとする政治的宣伝にしか聞こえない。振り返ってみれば、バイデン大統領は就任宣誓の時も、ヨーロッパ歴訪中も、G7サミットに出席した際も、何度も何度も「米国は戻ってきた」と言い続けている。これほど性急な自己PRは、リスクに晒されている米政府の心細さを露呈したものとしか言いようがない。
しかし、米国内の混乱な感染症対策、経済回復の鈍さ、激化しつつある人種差別と社会の分断、移民問題による国境地帯での人道主義危機、食い違いが拡大しつつある欧州との同盟関係……いずれも「米国は戻ってきた」という一言で解決のできない問題である。こうした米国の現状に対する憂慮は、米外交問題評議会(CFR)発行の「フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)」誌7月号の掲載論文のタイトルからも垣間見ることができた。そのタイトルとは、「帰ってきたアメリカ」は本物か(America is Back—but for How long)」であった。
本当のところ、米国は戻ってくるかどうかは関係なく、地球は回っている。しかも、そのまわり方は特定の国によって決まるものではない。バイデン大統領のツィッターに米国民から次のような書き込みが投稿されている。「America is coming back!しかし、戻ってきたのではなく、後退しているのだ」と。(CRI日本語部論説員) |