日中友好を推進しながら 在日華人労働者の権利を守る 印刷
2013年 9月 12日(木曜日) 00:00
〈ゲスト〉
笠原文雄さん(かさはら・ふみお)(中国名=鄭世偉 てい・せいい)
全日本華人華僑労働組合総連合(全日本華人華僑総工会)主席
〈プロフィール〉
1966年中国遼寧省撫市生まれの48歳。中国残留孤児2世を妻に持つ。1991年、26歳の時家族で帰国。中国向けにリサイクル品などの輸出業務を行う日本資源開発(株)代表取締役社長。2009年、全日本華人華僑労働組合総連合主席に就任、現在に至る

〈ゲスト〉

笠原文雄さん(かさはら・ふみお)(中国名=鄭世偉 てい・せいい)

全日本華人華僑労働組合総連合(全日本華人華僑総工会)主席


〈プロフィール〉

1966年中国遼寧省撫市生まれの48歳。中国残留孤児2世を妻に持つ。1991年、26歳の時家族で帰国。中国向けにリサイクル品などの輸出業務を行う日本資源開発(株)代表取締役社長。2009年、全日本華人華僑労働組合総連合主席に就任、現在に至る

今年6月の法務省発表の統計によると、中長期在留華人と日本国籍を取得した華人の合計はおよそ82万人。そのうち約13万人が労働者である。彼らの権利を守る組織として創立されたのが全日本華人華僑労働組合総連合(中国語では「総工会」)だ。鄭世偉主席率いる総工会では「中国人労働者の団結と社会的地位の向上をはかり、会の存在をアピールする」ために交流活動を日々活発にすすめている。

〈インタビュー〉

謝宏宇・北京放送局東京支局長

鄭さんが来日された経緯をお聞かせください。

鄭世偉・全日本華人華僑総工会主席 妻の母が残留孤児で、1991年に家族全員で日本に帰国しました。私の子どもは3人いますが、全員日本で生まれました。出身は遼寧省撫順市で、石炭の露天掘りで有名なところです。100年以上前からの石炭の産地で、日本人が大勢住んでいたので、残留孤児も多かったのです。

謝 来日する前はどのような仕事をしていたのですか。

鄭 中国でプロのスポーツ選手をしていました。12年くらいウィンドサーフィンやヨットなど、マリンスポーツのプロとして活動していました。中国遼寧省チームにも5年間ほど在籍していました。ウィンドサーフィンはいまでも国内外の試合に審判員として参加しています。

今年8月26日からは、4年ごとに開かれる「中国全国運動会(全運会)」にも審判員として呼ばれています。今年の開催都市は遼寧省瀋陽市です。これまでも08年の北京オリンピック、10年広州アジア大会など、さまざまな国際大会に審判員として参加しました。趣味としても東京・お台場などで楽しんでいます。

謝 来日した当時、日本語はできたのですか。

鄭 まったくできませんでした。まず「虹の会」という残留孤児とその家族を支援する団体による日本語教室で学び、その後、半年ほど日本語学校に通いました。

謝 当時、一番苦労された点はどんなことでしたか。

鄭 私たち残留孤児とその家族に対して、とても親切にしてくれました。日本の皆さんはやさしくて心が温かい。困るとすぐに助けに来てくれました。帰国してすぐに都営住宅に入居できましたし、生活費も支給されたので、それほど苦労は感じませんでした。

謝 その後、どんな仕事をされましたか。

鄭 貿易の仕事をはじめました。アワビ、車エビ、赤貝など中国の水産物を輸入して、築地などに卸していました。最初の5、6年間は順調でしたが、中国のバブル経済の影響で仕入れ値と売値の差が小さくなり、そのうち利益が出せなくなってやめました。その後、旅行会社、金融関係、先物取引などの会社を数年間やっていました。

そして現在の会社を設立したのが8年前のことです。主な業務はふたつあり、ひとつは中国から日本の中小企業に研修生を受け入れる事業です。もうひとつは日本資源開発?でのリサイクル関連の仕事です。石巻、小名浜、直江津、堺など日本国内各地で廃プラなどを収集して、天津、大連、寧波など中国各地に輸出するという事業です。このふたつの仕事を現在までつづけています。両方とも調子が良く売り上げも伸びています。

謝 現在従業員は何人ですか。

鄭 日本資源開発は事務所と工場あわせて40人の従業員がいます。3分の1は日本人で、売り上げは約20億円です。

謝 将来の夢、目標は何ですか。

鄭 将来はメーカーとして製品をつくって上場したいですね。何とかチャンスをつくって、いつか自分でモノづくりにチャレンジしたいと思っています。

謝 主席をされている労働組合総連合について教えてください。

鄭 02年に華人華僑労働者の権利を守るために設立されました。3年前に私が主席に選出されたのを機に、団体の名称を変え、人事も刷新しました。優秀な方々に役員になっていただいて、副主席には宋啓海氏、胡逸飛氏、郭良氏の各氏はじめ10人、顧問に莫邦富氏、程波氏、毛峰氏ら11人が名を連ねています。組合の目的は労働条件の維持改善、互助精神の推進、労働者の社会的地位向上、日中友好の推進などです。

謝 どのような活動内容ですか。

鄭 「総工会」では2年前から富士山などへの旅行、セミナー、演奏会を行っています。去年から、春節を祝う大きなイベントをはじめました。在日中国人華人カラオケ大会では今から年末まで予選大会をつづけ、最終的に勝ち抜いた6人と中国からの有名歌手が出演して春節イベントを行う予定です。去年は東京・練馬文化センターで行い、1500席すべてがすぐに売り切れてしまったほどの人気でした。来年14年の「在日華人華僑 春節を祝う会」は、1月13日に東京・渋谷の日本青年館で開催することが決まっています。これは年に一度の大切なイベントで、その目的は会の存在をアピールすることと求心力を高めて、会員がひとつに団結することです。

謝 これからも在日華人華僑労働者のために頑張ってください。