在日華僑の生活ニーズに密着 多様な情報発信で日中間の誤解をなくしたい!! 印刷
2011年 9月 09日(金曜日) 15:52
〈ゲスト〉

蒋豊(しょう・ほう)

株式会社日本新華僑通信社取締役編集長

〈プロフィール〉

1959年中国北京生まれ。83年北京師範大学歴史学部卒業。同年、北京市北緯路中・高校教師担任を経て、『中国青年』雑誌社編集・記者。90年東京国際日本語学校卒業。92年横浜市立大学文理学部研究生修了。94年九州大学大学院文学修士号取得。94年『留学生新聞』副編集長。96年『東方時報』編集長。99年『日本新華僑報』編集長に就任。現在は『日本新華僑報網』総監、『環球時報』駐日本特約記者『人民網』(人民日報属)特約記者、中国湖南衛星テレビ局駐日特約評論員などを兼任 。

〈インタビュアー〉

賈秋雅(か・しゅうが)

人民中国雑誌社東京支局長

〈プロフィール〉

 1982年中国江蘇省南通市生まれ。00年中国人民大学外国語学院日本語学部に入学。在学中、中日交流の促進を趣旨とする「桜花社」(学生サークル)創設。04年卒業後、人民中国雑誌社入社。08年1月駐日記者として来日。10年1月同社東京支局支局長に就任後、現在に至る。

中国の主要メディアであるCCTVや人民日報、環球時報などと連携しながら、日本と中国で情報発信をつづける華人メディア『日本新華僑報』。現在は新聞とウェブサイトを中心としたメディア活動を展開している。取締役編集長の蒋豊氏は留学経験を経て、このオリジナリティ溢れるメディアを創刊した在日新華僑だ。その創刊までの経緯と今後の展開について、人民中国雑誌社東京支局長の賈秋雅氏にインタビューしてもらった。

賈秋雅・人民中国雑誌社東京支局長 来日するまでの経緯についてお聞かせください。

 

蒋豊・日本新華僑通信社取締役編集長 来日する前までは中国共産主義青年団の機関誌『中国青年』の編集に携わっていました。中国青年には83年に入社したのですが、当時は中国の改革開放の時期で、当時から海外のことに非常に興味がありました。とくに第二次世界大戦の敗戦国でありながら、経済大国になった隣国・日本に行ってみたいという思いを持っていたんです。経済力もさることながら、テレビドラマ『おしん』なども大好きでしたしね。そんな折、当時首相だった中曽根康弘氏が留学生10万人計画を打ち出し、日中間の留学生交流などが盛んに行われるようになり、私も日本に留学することにしたのです。

 

賈 どこの大学に留学したのですか。

 

蒋 横浜市立大学に研究生として入り、書籍の翻訳なども行いました。その後、九州大学大学院で修士課程を修了しました。

 

賈 日本ではどのようなアルバイトを経験しましたか。

 

蒋 飲食店の皿洗い、ビルの清掃、中国語の先生、パン屋さんの店員など、10種類以上のアルバイトを経験しました。振り返ってみると、当時の経験のおかげで私はコミュニケーション能力を培うことができたように思います。日本では新入社員に各部署を一巡させて、いろんな仕事を経験させます。そして、上司と部下の関係性を学び、コミュニケーション能力を高めていくのです。が、中国では個人主義が蔓延し、最近では競争社会の色合いが濃くなっています。子どもの頃から勉強や試験漬けにされてしまうので、人間関係について学ぶ機会が少ないのです。

 

賈 大学卒業後はどんな仕事をはじめたのですか。

 

蒋 東京に戻って『留学生新聞』に入社し、その後『東方時報』に転職しました。そして、99年2月に『日本新華僑報』という新聞を創刊して、現在も取締役編集長として紙面づくりに携わっています。ちなみに、私が来日したときには華人メディアはひとつもありませんでした。88年10月にやっと留学生新聞が創刊され、私は大学で勉強しながら第2号から制作に携わりはじめたのです。

 

賈 どうして日本新華僑報を創刊したのですか。

 

蒋 在日華僑たちが求めるテーマが大きく変化してきたように感じたからです。実際、在日華僑のうち帰化した人は11万人、永住ビザを取得した人は14万人にも上っており、日本に定住する人たちが圧倒的に増えてきました。また、それにともない在日華僑の生活水準が日本人とほぼ同等になり、彼らの興味関心は教育や政治経済、医療など多岐にわたるようになってきたのです。つまり、かつては留学生向けの情報が求められていましたが、最近ではより生活に密着した情報が必要とされるようになってきたのです。たとえば、中国から奥さんや子どもを呼んだときに、どんな問題が生じるのか。そして、それをどのように解決すればいいのかといった悩みがあります。私自身も経験しましたが、子どもが学校でいじめに遭ったときにどう対処すればいいのかといった悩みも多いでしょう。日本と中国の商習慣の違いに頭を悩ませている新華僑のビジネスマンも数多くいると思います。日本では雑用も引き受けなければならないし、上司との飲みにも付き合わないといけませんから。

 

賈 日本だけでなく、中国にも情報発信をしていますね。

 

蒋 ここ数年、メディアは急速な発展を遂げました。これからは新聞紙だけでなく、ウェブサイトや動画、音声、電子メールなど、多様な手段で情報発信をしなければ、時代ニーズに応えることができません。その一環として、私たちはウェブサイトを通じて、華僑や日本の政治、文化、娯楽などの情報を中国に向けても発信するようにしています。また、CCTVや人民日報、環球時報などとパートナーシップを結んで、日本情報の配信なども行っています。こうした情報発信を通じて、日本と中国が誤解のない交流関係を持てるようにしたいと考えています。

 

賈 日本にはさまざまな華人メディアがありますが、日本新華僑報にはどのような強みがありますか。

 

蒋 日本記者クラブなどにも所属し、公式ルートでの取材にも力を入れています。そして、新華僑の目線で政治家や官僚への取材を行い、独自のコンテンツを発信しています。たとえば、国会議員へのインタビューシリーズや47都道府県の知事へのインタビューのシリーズなどを連載しています。また、読者からの質問や悩み相談に応えるために、新聞制作だけでなく、在日華僑からの法律や不動産などの相談にものるようにしています。

 

―既存のメディアではできないことにチャレンジしつづけてください。本日はありがとうございました。