中国の伝統楽器「古箏」の 魅力を伝えたい!! 印刷
2010年 8月 09日(月曜日) 16:28

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来日14年目のウリアナさんは内モンゴル出身で、古筝のソリストとして活躍している。その演奏はハープのように多彩な音色が特徴で、聴衆を癒しの世界に誘うと評判だ。また、日本の伝統楽器である篠笛との共演活動も展開しながら、古箏の魅力を発信しつづけているという。さっそく、科技日報東京支局長の葛進氏にインタビューしてもらった。

葛進・科技日報東京支局長 ウリアナさんは中国の伝統楽器「古筝」のソリストとして活躍していますが、いつ頃から古筝を習いはじめたのですか。

ウリアナ・古筝ソリスト 私はモンゴルで生まれ、12歳の頃から古筝の演奏をはじめました。そして、14歳で内モンゴル芸術学院に入学し、中国古筝の世界で博士号を取得しているハス先生から最新の奏法を学びました。その後、19歳で芸術学院を卒業し、民族歌舞団で古筝のソリストとして演奏活動をはじめました。ちなみに、日本の箏は指の第二関節のあたりで弾きますが、古箏は第一関節のあたりで弾くのが一般的です。そのため、古箏はハープのように多彩で繊細な音を表現するのに向いているといわれています。

葛 どのような経緯で来日したのですか。

ウリアナ 96年に大阪で公演したのが大きな契機になりました。というのは、古筝の演奏に対する観客の反応がビックリするほど良かったからです。それで、ヒョッとすると古筝奏者として日本で受け入れられるかもしれないと思うようになったのです。しかも、当時は留学することが大きなステータスでもあったので、その翌年には日本に留学することにしたのです。

葛 日本語を覚えるのは大変でしたか。

ウリアナ やはり単語を覚えるのには苦労しました。文法はモンゴル語に似ていましたが、単語は自分の努力で覚える以外にありませんから。そこで、私は1日30語は覚えようと、よく新橋のSL広場でパンを食べながら単語の勉強をしていました。いつだったか、右手に単語帳、左手にパンを持って勉強していたら、いつの間にかハトにパンを食べられてしまっていたこともありました。

葛 日本での演奏の仕事はいつ頃からはじめましたか。

ウリアナ 来日2年目になると、いろんな人からの紹介で、古筝演奏の仕事が入るようになってきました。最初はそれほど多くありませんでしたが、今では年間に50~60回は演奏活動を行っています。

葛 日本の演奏家との共演も行っていますね。

ウリアナ 篠笛奏者の大野利可さんと共演しています。篠笛の音はフルートとも中国の笛とも違うので、最初は合わせるのに苦労しました。でも、一曲一曲、試行錯誤しながらアレンジしていくうちに、自分たちでも驚くほど美しいハーモニーを、生み出すことができるようになりました。

葛 楽曲やアレンジにはどのようにこだわっていますか。

ウリアナ 3年前に外モンゴルをイメージした組曲をつくりたいと思い、真冬のモンゴルに出かけました。そして、現地の先生から助言をもらって、モンゴルの伝統的な曲を探し出すことに成功しました。しかし、その楽譜は状態が悪く、なかなか読み取ることができませんでした。これを日本のピアニストなどと協力して読み解いていったのです。こうして再現したモンゴルの伝統曲に私や大野さんのオリジナル曲を加え、『モンゴル大地組曲』を完成させました。30分くらいの大作で、来年1月に披露する予定です。

そのほか、大野さんの先生である鯉沼廣行さんとギタリストの辻幹雄さんが作曲した「悲笳の曲」を、大野さんと一緒に演奏したりもしました。もともとギターと篠笛のために書かれた曲なので、コードを古筝用にアレンジするだけでも苦労しました。クラシックと伝統楽器とでは、コードが微妙に違いますから。

葛 CDも出されているそうですね。

ウリアナ 06年2月に『モンゴルの新しい風』というCDを出しました。ハーモニカ奏者の齋藤寿孝さんが録音に参加してくれた作品で、独自の音色や演奏方法にこだわってつくりました。私は自分でも作曲をするので、これからも独自性のある楽曲をつくって、一枚のアルバムにしていきたいと思います。

葛 古筝の教室も開いているそうですが、そちらのほうはいかがですか。

ウリアナ 教室では10人くらいの生徒たちに教えています。年齢層は20代~80代までと幅広く、男女問わず学びに来ています。

葛 これから挑戦したいことはありますか。

ウリアナ 2年前にオーケストラと共演している夢を見て以来、いつかはそれを実現したいと思っています。また、これからもドンドン古筝の魅力を発見し、それを伝える活動を行っていきたいと思います。日本人は癒されるような音色が好きなので、古筝の弦をより細い金属弦にしたり、日本の箏のようにナイロン弦に変えてみたりするのもおもしろいかもしれません。

葛 これからも古箏の魅力を発信しつづけてください。ありがとうございました。

 

 

古筝ソリスト

ウリアナ

中国内モンゴル自治区フフホト市生まれ。内モンゴル歌舞団のメンバー。両親の下で音楽に親しんで育ち、12歳より古筝を学ぶ。内モンゴル芸術学院を卒業。中国音楽学院、上海音楽学院で学ぶ。中国古筝交流協会会員。97年日本に留学、東京学芸大学で音楽学研究課程修了、独自の古筝を目指す。NHK主催の「中国四大文明展」の横浜会場に出演。CD「古筝で旅をするモンゴルの心」を発売。06年2月日本テイチクレコードよりCD「モンゴルの新しい風」を発売。これまでに日本、中国外モンゴル、香港、台湾、マレーシア、シンガポールなどで演奏活動を展開している

 

 

科技日報東京支局長

葛進

(かつ・しん グゥ・ジン)

1977年中国遼寧省生まれ、02年国際関係学院法律学修士卒業。同年中国科技日報に入社、国際部記者。09年5月来日。同年12月科技日報東京支局支局長に就任後、現在に至る