中国語学習者や中国人観光客をターゲットにした独自のタッチパネルを新開発!! 印刷
2010年 9月 08日(水曜日) 12:17

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北京放送東京支局長 謝宏宇                                        ㈱ユーシーアイ代表取締役社長 蔡毅

リーマンショック以降、多くのIT事業者が苦戦を強いられている。しかし、なかには脱人材事業をはかり、前向きにビジネスを展開している経営者もいる。というわけで、今号では北京放送東京支局長の謝宏宇氏がタッチパネルを生かしたシステム開発を展開している蔡毅氏にインタビュー。今後のITビジネスの展望を語ってもらった。

 

㈱ユーシーアイ代表取締役社長

蔡毅

(さい・き ツァイ・イー)

58年生まれ。北京工業大学計算機学院卒業。86年北京工業大学の研修生として来日。90年に2度目の来日をはたし、ソフトハウス㈱に入社。97年㈱ユーシーアイを設立し、システム・ソフトウェアの開発やSE派遣などを展開する一方で、北京に子会社を設立し、日中間でのシステム・ソフトウェアの設計やコーディング業務などを展開。現在は自社製品の開発と販路拡大に力を入れている

 

北京放送東京支局長

謝宏宇

(しゃ・こうう シェー・グァンイー)

1972年雲南省生まれ。91年天津南開大学日本語科に入学。95年中国国際放送局(北京放送)に入局。日本語放送の時事解説、『キャッチ・ザ・北京』『暮らし情報』などの番組を担当。04年から日本語部の副部長、部長を歴任。09年10月中国国際放送局東京支局長として来日後、現在に至る

 

謝宏宇・北京放送東京支局長 まずは来日の経緯についてお聞かせください。

蔡毅・ユーシーアイ代表取締役社長 86年に北京工業大学の研修生として、2年間、日本に滞在しました。その後、一度は北京に帰ったのですが、90年にふたたび来日しました。それからは大手IT企業のソフトハウスに7年間ほど勤め、コンピュータシステムの開発などを担当してきました。

謝 現在の会社はいつ頃、設立したのですか。

蔡 97年に独立して、ソフトウェアやシステムの開発を行うことにしました。しかし、当初はほかのIT企業と同じく、SEなどの派遣業務が多かったですね。

謝 今はどのくらいの社員を抱えているのですか。

蔡 日本法人は30名で中国法人は40名です。08年中旬には日本に60名、中国に80名の社員を抱えていましたが、金融危機で派遣業務がイッ気に減少してしまったのです。IT業界では本当に急激な変化が起こっています。

実際、5年前までは日本語を話せなくてもいいから、とにかくSEを派遣してほしいといわれていたんです。それが、最近はどの会社も人件費をさらに削減するようになり、より安い海外に仕事を振るようになってきました。私たちも途中までは中国法人で対応していたのですが、それでも高すぎるといわれるようになってきたんです。そして、今ではメーカーが直接、ベトナムをはじめとした東南アジアに仕事を振るようになっています。このままだと派遣事業に未来はないと感じたのです。

謝 ビジネスの大きな壁にぶつかったわけですね。では、どうやってこの壁を乗り越えたのですか。

蔡 私は日本では外国人ですし、言葉や人脈の面で日本人に劣っています。では中国ではどうかといえば、長い時間、日本で生活してきたこともあって、やはり中国での人間関係が希薄になりつつあるので、人脈もなくなってきました。ならば、日中の架け橋になるようなビジネスを展開して、自分の能力や個性を最大限に生かしたいと思うようになったのです。

謝 具体的にはどういった事業を行っているのですか。

蔡 08年4月に『中国語楽園』(http://www.chineseplaza.jp/)という中国語学習サイトと学習に使用するテキストをつくりました。このサイトは本を使いながら学習できるようになっており、ネイティブな発音や口語的な語法をシッカリと学ぶことができるようになっています。また独自のタッチパネルがあり、液晶画面と併用し授業などで使用すると最高です。現にそういったことが評価されて、今では早稲田大学や明治大学をはじめ、7つの大学の授業で採用されています。価格はタッチパネル用のモニターと教材を合わせて30万円くらいです。

謝 日本に来る中国人観光客向けのサービスも展開しているそうですね。

蔡 中国人観光客向けにメイド・イン・ジャパンの商品を紹介し、販売するウェブサイト『885Buy』(http://www.885buy.

com/)を立ち上げました。これはフツーのECサイトと違い、注文のあった商品を日本から発送したりすることはありません。観光客が来日した際に実物をチェックしてもらい購入するという仕組みになっているのです。中国のECは信頼と物流のふたつが大きな課題となっているので、実際に現地で見てもらって、持って帰ってもらうのが一番なのです。現在、取り扱っている商品数は800~900アイテムです。化粧品や健康用品などが多いですね。

また、せっかく観光客が増えているのに、中国にはほとんど日本に関する情報がありません。そのため、中国人観光客はどこに何があるのかをほとんど知らずに来日しています。そこで、私は旅行会社と組んで、日本の情報を搭載した中国語対応の携帯電話をレンタルできないかと考えています。個人旅行客が増えてくることを前提に、こういった端末があったほうが観光客も受け入れ側の地域も便利なのではないでしょうか。

謝 まさに時代のニーズに応えた商品ですね。

蔡 そのほか、パーティーやイベントで使えるシステム「Our Event」も開発しました。たとえば、このシステムを使えば、モニター上で抽選やゲーム、ビンゴ、カラオケなどができるようになっています。また、受付で参加者の写真を撮影して、アルバムを作成することもできるし、ビンゴゲームなどの際には、モニター上にビンゴができた人の顔写真を表示したりすることもできるのです。また、システム上で電話やメールをすることもできるので、イベントに参加できなかった人にその場でコメントをもらったりすることもできます。価格は100インチのタッチプレートと32インチのタッチパネル用のモニターおよびシステムがセットになっていて60万円くらいです。

謝 これは中国向けのシステムなのですか。

蔡 もともとは中国向けにつくったシステムなのですが、今は日本語版も出しています。中国では昨年7月の展示会で好評だったので、現在は北京、上海、武漢などに代理店を設置しています。今年の6月からはこのシステムを中心にした結婚式やイベントの企画・運営も行うようになりました。日本での販路はこれから拡大していきたいと考えています。

謝 今後も前向きな取り組みで、IT不況を乗り越えてください。ありがとうございました。

最終更新 2010年 9月 09日(木曜日) 16:21