日本医療のガイドを養成して もっと中国人の"医療観光"を盛り上げたい!!  印刷
2011年 4月 08日(金曜日) 14:28

昨年は観光ビザの解禁などで、来日する中国人観光客が急増した年でもあった。と同時に、たんなる観光ではなく、医療観光というニーズも盛り上がりを見せているという。そこで、今号では北京放送の謝宏宇東京支局長が、日中の医療交流のインフラづくりを行っている陳敏氏にインタビュー。はたして、日中の医療交流はどのような方向にすすんでいくのか。

日中医療交流センター所長(眼科医師)

陳敏

(ちん・びん チェン・ミン)

72年中国江西省生まれ。04年広東省の曁南大学の眼科専門修士課程卒業。その後、上海復旦大学付属病院で眼科医として勤務する。06年中国の教育部と日本の文部科学省からの助成を得て、国費留学で来日。現在、観光で来日した中国人向けの医療相談などを行なう団体「雪中送炭」で活動中

 

北京放送東京支局長

謝宏宇

(しゃ・こうう シェー・グァンイー)

1972年雲南省生まれ。91年天津南開大学日本語科に入学。95年中国国際放送局(北京放送)に入局。日本語放送の時事解説、『キャッチ・ザ・北京』『暮らし情報』などの番組を担当。04年から日本語部の副部長、部長を歴任。09年10月中国国際放送局東京支局長として来日後、現在に至る

 

謝宏宇・北京放送東京支局長 陳さんは来日するまではどのようなことをしていたのですか。

陳敏・日中医療交流センター所長(眼科医師) 私は広東省の曁南大学を卒業しました。曁南大学は中国における角膜研究でもっとも有名な大学のひとつです。修士課程では眼科の勉強をしながら、中山大学(広東省)の中山眼科センターで角膜移植、レーシック手術などの臨床技術を学びました。その後、復旦大学の付属病院で眼科医として勤務していました。当時は1日に80人もの患者さんをみることもあり、とても忙しい日々がつづいていました。

謝 いつ来日したのですか。

陳 06年10月に中国の教育部と日本の文部科学省からの助成を得て、国費留学で来日しました。日本語を勉強する期間が半年しかなかったので、日本語に慣れるまでには時間がかかりました。それまでは中国語か英語しか使ってこなかったので苦労しました。ところで、私の留学期間はすでに終わっているのですが、中国からの許可を得て、今も日本での研究活動をつづけています。

謝 研究と同時に、日中の医療交流にも尽力されているそうですね。そのあたりのお話をお聞かせください。

陳 日本と中国の医療交流については、来日した当初から考えていました。というのは、日本と中国の医療環境は大きく違うので、その違いやギャップを埋めることが大事だと思ったからです。日本や中国のお医者さんたちに話してみたら、多くの人が「それは素晴らしい」と賛同してくれました。

たとえば、中国の場合はたくさんの薬を飲ませる傾向がありますが、日本ではできるだけ薬を使わないような治療を試みます。また、日本は医療保険制度が充実していますが、中国では依然として医療保険制度が未整備で、治療を受けるのにかなりの負担がかかります。こういったことからも、中国は日本との医療交流をすすめて、日本の医療の良いところを学んでいくべきだと思っています。

謝 中国人観光客が急増していますが、そのあたりについてはどのように考えていますか。

陳 来日する中国人の多くは日本語を話すことができません。そこで、私は「雪中送炭」というNPO団体を立ち上げ、中国語対応ができるコールセンターなどを設立したいと思っています。観光などで来日した際でも、気軽に中国語で医療相談ができるようなインフラが必要だと思ったからです。なお、電話対応をするスタッフには在日留学生や在日中国人医師協会などの人材を活用したいと思っています。東京都にこのプロジェクトを申請したところ、800万円の補助金を得ることができましたし、さまざまなお医者さんたちも参加してくれることになりました。一刻も早くシッカリとした基盤をつくって、中国人観光客の医療に関する困りごとに対応していきたいと思っています。

謝 日本への医療観光というニーズも高まっているのではないですか。

陳 おっしゃる通りです。先の尖閣問題でやや下火になりましたが、依然としてニーズは高いですね。とくに人間ドッグやPET検査、手術などを受けたいという声が多いようです。そのため、これからは日本医療に関するガイドやコーディネーターを養成していく必要があります。中国語が話せて、日本の医療に通じた人材を育てることができれば、医療観光の人気はドンドン高まっていくはずです。もちろん、ホテルや旅館、医療機関との連携もすすめていきたいと思っています。

謝 やはり富裕層がターゲットになるのでしょうか。

陳 そうですね。医療観光に関しては交通費や治療費を考えると、どうしても相当な金額が必要になりますから。それに、医療保険が効かず日本人よりも治療にお金がかかってしまうのですが、それでも日本で良い治療を受けたいという富裕層の人たちは多くいるのです。

謝 今はどういった人たちが、医療観光のガイドやコーディネートを行っているのでしょうか。

陳 日本で医療に携わっている在日華僑が仲介しているケースが多いようです。しかし、それだけでは今後の観光客増に対応できないので、やはり組織的に対応できる仕組みをつくるべきでしょう。

謝 これからも日中の医療交流の促進を目指して頑張ってください。本日はどうもありがとうございました。