「カワイイ」で海外進出に内需拡大 印刷
2010年 11月 25日(木曜日) 10:40

Kawaii流 まちおこしを徹底レポート

いまや世界でもっとも知られている日本語のひとつになっている「カワイイ」。その影響は世界中に広がり、各国で大きなブームを生み出している。この世界的にも認められる「カワイイ」を生かせば、地域の活性化にもつなげられるのではないだろうか。

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「東京ガールズコレクション2010 S/S」に参加した京都市のステージ

昨年、外務省は3名の若手ファッションリーダーをポップカルチャー発信使(通称:カワイイ大使)として委嘱した。目的は日本のポップカルチャーを世界へ広めることだ。昨年1年間、カワイイ大使の3名はフランス・パリやタイ・バンコクなどで開催されたイベントに出向いて日本のポップカルチャーの魅力をPRした。

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「東京ガールズコレクション2010 S/S」のステージには門川大作京都市長も登場してPR

そうしたPRが奏功したのか、今年7月、パリで開催された世界最大規模の日本のポップカルチャーの祭典「ジャパン・エキスポ」には、人気キャラクターに扮したコスプレイヤーや「カワイイ大使」に代表される「原宿系古着リメイク」「ロリータ」「制服」といったファッションに身を包んだ若者たちが集まった。今年は昨年を上回る17万人が訪れる盛況ぶりだった。一方、タイでは日本人観光客の誘致にコスプレコンクールを開催し、「コスプレ観光大使」を任命。日本とタイのオタク文化をPRに利用するという。タイでは日本のアニメがテレビで放送されているので、アニメ文化に親しんで育った若者にはコスプレが受け入れられているようだ。

外務省文化交流課の担当者は「いまや世界中で日本のポップカルチャーをテーマにしたイベントが開催され、多くの人たちを集めています。その発信源となっているのが日本の漫画やアニメ、そして原宿に見られる独自のファッションです。これからも『カワイイ』を入り口にして日本文化を発信していきたい。『カワイイ』は驚くほど世界中に浸透しています」と話す。

そもそも「カワイイ」という言葉が世界的に広まり出したのは、ここ数年のこと。日本人にとっては普通の言葉が、なぜこんなにも支持されるのだろうか。

コンテンツメディアプロデューサーで、外務省のポップカルチャー全般のアドザバイザーも務めた櫻井孝昌さんは「外国人が考える『カワイイ』は英語のcute(キュート)とも違い、日本という国に対する独特のイメージが込められています。それはモノづくりに対する日本人のキメ細かさやこだわりの姿勢です。

たとえば、日本のアニメは背景の描き込みからキャラクター設定までとにかくディテールが細かい。そうした特徴が『カワイイ』という概念にも含まれてきているのです」と話す。

櫻井氏の著書『世界カワイイ革命―なぜ彼女たちは『日本人になりたい』と叫ぶのか―』(PHP新書)では、フランス・パリ、スペイン・バルセロナ、ドイツ・デュッセルドルフ、イタリア・ミラノ、タイ・バンコクといった世界各国の都市で、「カワイイ」という言葉が若者たちを熱狂させている様子が描かれている。

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カワイイファッションの店が立ち並ぶ原宿の竹下通り 買物を楽しむ外国人観光客

原宿が「カワイイ」の聖地に

では、世界的に広まる「カワイイ」はどのような経済効果をもたらしているのだろうか。「カワイイ」に関係する産業はアニメ、漫画、ファッションなど多岐にわたる。たとえば、ファッションの場合、「カワイイ」の聖地となっているのが東京・原宿だ。近年、原宿では外国人観光客が急増している。その目的は蕫原宿ファッション﨟の買物だ。

原宿神宮前商店会事務局長の井口泰さんは「最近は、原宿を歩いている人の1割近くは外国人観光客なのではないか。その多くが原宿ファッションの買物を楽しみにしている。以前は欧米のファッション関係者が多かったが、最近は一般人が増えている。人気店では売上げの2割が外国人観光客だといっていた。もはや外国人観光客なしでは考えられない」と話す。

ダマっていても外国人観光客がやってくる原宿だが、4年前から原宿神宮前商店会では「外国人観光客原宿ファッションガイドツアー」を開催している。中国語・英語・韓国語に堪能なツアーガイドが、周辺エリアのショップなどを紹介して回るというもの。ツアーは毎年1回、2月に開催。期間中は約100人の外国人観光客が参加するという。「竹下通りや稲田地区をはじめ、蕫裏原宿﨟など外国人観光客があまり歩かない場所にも行くので、参加者からは『原宿の魅力を再認識した』といった声をいただいている」そうだ。

農業作業の現場にも「カワイイ」

一方、兵庫楽農生活センターの取り組みはユニークだ。同センターは「カワイイ」で農業の活性化をはかろうというのだ。この3月には農作業着のファッションショーを開催した。その名も「野良コレ」。会場では市販の服を組み合わせて15種のコーディネートを提案。手袋やレインブーツにはリボンを付け、ファー付きのオーバーオールにヒョウ柄の長靴を組み合わせるなど、カワイイテイストが人気を呼んだ。

同センター理事長の金川喜八郎さんは「もちろん農業人口を増やすのが目的のひとつですが、男性はなかなか農業に目を向けてくれない。それならばということで女性に注目しました。女性が農業に従事していれば男性も目を向けてくれる。まずは女性に農業に関心を持ってもらいたい、ということでお洒落な作業着をつくることを思いついた」と金川さんは取り組みへの意欲を燃やす。

さっそく金川さんは、HPのコラムで「女性にも着やすいお洒落な農作業着をつくりたい」と呼びかけたところ賛同者が現れたのだ。呼びかけに応じたのは管理栄養士で県嘱託職員の山田奈央子さん、アパレル会社に勤務する小野由香利さん、そのほかイベント企画会社の社長やフリーライターなど8名。このメンバーでファッション推進協議会を設立してショーの準備を進めた。

野良コレには県内企業も注目。園芸資材メーカーのキシボシはコラーゲンを生地に塗り込んで手荒れを防ぐ手袋を、帽子メーカーのマキシンは外作業に欠かせない帽子を、そのほか8社が商品を提供した。「若者の農業への意識が高まっています。より農業に興味をもってもらうためには、ファッションも大事。楽しく農業をしてもらえるよう機能性も含めてご提供したい」と金川さんはいう。

ともあれ、発信力バツグンの「カワイイ」には、モノづくりに対するキメ細かさ、ファッション性、そして意外性が潜んでいるようだ。「カワイイ」を生かせば、内需拡大、世界進出も夢ではなさそうだ。

最終更新 2011年 2月 01日(火曜日) 19:52